飲食店では、食中毒や火災などの危険がなく、お客様が安全に利用できることが大切です。日常的な清掃と衛生管理を行い、定期的に業者へ依頼して設備を清潔に保ちましょう。
本記事では、飲食店で清掃が必要な理由や、清掃のポイント、業者の選び方などを解説します。清掃業者へ依頼をする際には、ぜひ参考にしてください。
飲食店に求められる清掃
飲食店が清掃を行う目的は、主に清潔感の維持と安全性の確保のためです。
清掃によって店舗の清潔感を高めることは、飲食店が顧客満足度を高め、集客を増やすために重要な意味を持ちます。
日本トレンドリサーチが2022年に行った調査によると、一般的な利用者の75.9%がこれまでに店内の汚れが気になった経験があり、60.6%は店内の汚れを理由にリピートを避けたことがあるとされます。また、清潔感を理由に店を気に入ったことがある割合は41.8%であり、利用客の多くが飲食店を選ぶ際に衛生面を重視していることがうかがえます。
PR TIMES「【飲食店の清潔感】60.6%が、店内の汚れが理由で「それ以来行かなくなった飲食店がある」」
清掃を徹底すると、顧客満足度だけでなく、従業員満足度の向上にも貢献します。清潔な現場では従業員がやる気を高めやすく、生産性やサービスの質の向上に期待できます。また、サービスの質が高ければ、結果的に顧客満足度の向上へとつながります。このように、衛生面と顧客満足度・従業員満足度は切っても切れない関係にあります。
保健所への対応と清掃マニュアルの作成
清掃による安全の確保は、飲食店が経営を続けるうえでの義務でもあります。
まず、飲食店の開業には営業許可証が必要です。許可を得るためには、各店舗に1人の食品衛生責任者を配置する必要があるほか、保健所による検査で店内の衛生環境もチェックされます。
営業許可を得たうえで経営を続けるためには、食品衛生法の規定に則った衛生管理に努めなければなりません。現在は法改正によって、HACCAPと呼ばれる手法に沿った衛生管理が必要です。
HACCAPでは、食品の危害要因の把握と、重要な工程の管理を実施するよう手順を定めています。原材料や調理工程はもとより、厨房および客席の壁・床、設備も把握と管理の対象に含まれます。そのため、衛生管理のために店内の清掃が必要となります。
HACCAPを導入する際には、従業員が衛生管理計画を実施、記録できるように、誰でも分かるマニュアルを作成します。マニュアルでは、清掃に加えて原材料の仕入れや保管、調理などの手順を具体的に決めます。
このようなマニュアル化が必要な理由としては、主に食中毒や二次汚染を防ぐためです。清掃が徹底されなければ、多数の人が触れる場所にウイルスや菌が付着し、二次汚染が起こるリスクがあります。また、実施の記録を残すことで、問題発生時に素早く原因を突き止めて拡大を防ぐことができ、マニュアルの改善にも活かせます。
食中毒が起きれば、被害者への賠償が必要となったり、業務停止命令などの行政処分を受ける可能性があります。行政や法律に従うことはもとより、店舗の評判を損ねる恐れもあるため、食中毒を起こさないよう店舗を清潔に保つことが重要です。
飲食店を清掃するときのポイント
飲食店では、日頃の清掃はもちろん大切ですが、定期的に業者へ依頼し、設備を清潔に保つことが大切です。4つの設備について、それぞれの清掃のポイントを紹介します。
グリストラップの清掃
グリストラップは、生ごみや油脂をせき止め、分離させて排水するための設備です。
多くは3つの槽に分かれており、第1槽で生ごみや残飯などの固形物を、第2槽で油脂や細かな汚泥を取り除き、第3槽から下水道へと排水します。
グリストラップで分離された生ごみや油脂は、それぞれの槽内に溜まっていくため、日常的に清掃し、産業廃棄物として処理する必要があります。
第1槽には生ごみを受け止めるバスケットが付いています。毎日、水気を切ってごみ袋にあけ、空にしておきます。専用のネットを使用すると、バスケットを取り外す手間がなくなるため作業が楽になります。バスケットが目詰まりを起こしている場合には、たわしなどでこすって汚れを落としておきましょう。
第2槽の油脂は、週1回程度、ひしゃくですくうか、油吸着シートを使用して清掃します。
なお、固形物はある程度バスケットで分離されるものの、通過したものが汚泥として底に沈殿します。この沈殿物は、月1回程度はすくい上げて清掃します。
さらに、第3槽にある排水のためのトラップ管は、2~3カ月に1回程度のこすり洗いが必要です。
生ごみや油脂を溜める設備のため、清掃を怠ると詰まりが発生し、悪臭や害虫が増える原因となります。ただし、日常的に清掃していても汚れの取り残しなどが蓄積し、トラブルが発生するケースは少なくありません。特に油分が多いメニューを提供する店舗では汚れるペースも速いので、より高頻度で掃除しましょう。
グリストラップは、日常的な清掃に加えて、定期的に専門業者へ依頼するのがおすすめです。バスケットの網目やトラップ管など隅々まで清掃できるため、トラブルの発生を未然に防げます。
ダクトや厨房フードの清掃
ダクトは厨房の熱や煙を排気したり、店内の空調や換気のために空気を運んだりする管です。油や埃が溜まりやすい設備のひとつであり、汚れを付着したままにすると、排気不良や火災を起こすリスクがあります。2~3年に一度の定期的な清掃が必要となります。
ダクトの内部は狭く、長さがあるため自分で清掃するのは困難です。排気不良が起きた場合や、清掃の時期が来た時は、専門業者に依頼しましょう。
飲食店では多くの場合、ダストストリーム工法と呼ばれる方法が用いられます。ブラシや油を溶かす薬剤などを使用して汚れを落としつつ、室外に設置した集塵機で吸い出します。
厨房フードは、コンロなどの熱機器のうえにある箱状の設備で、油や煤を含んだ水蒸気、煙を店内へ漏らさないよう吸気するのが役割です。ダクトと同様、汚れによって排気不良や火災の原因となるほか、フード内部に付いた油や水分がしたたり、料理に付着する可能性もあります。
フードは特に汚れを含む空気を受けるぶん、ダクトよりも汚れが溜まりやすいため、半年から1年に1回は清掃しましょう。
吸気口には油分を分離するためのグリスフィルターが設置されており、取り外して清掃できます。洗剤やスポンジなどを使って溜まった油脂を落としましょう。
フード部分やフィルターを設置するケースは簡単には取り外せないため、清掃には手間がかかります。こちらは専門業者に依頼するのがおすすめです。
厨房フードは、店の構造によっては客席から見えやすいこともあります。月1回など、高頻度で清掃を依頼することで、清潔な印象を与えられます。
エアコンの清掃
飲食店に設置されているエアコンは、油・埃を吸い込む量が多く、カビや悪臭の発生、熱効率の悪化が懸念されます。1年に1度は清掃すると、臭いを抑えられるほか、電気代の節約になります。
フィルターやダストボックスは簡単に清掃できるので、定期的にごみを取り除きましょう。ただし、細かな部分まで分解し清掃するのは自分では難しいため、専門業者への依頼がおすすめです。誤って基盤などに水をかけると故障の原因となるので、フィルターより内側の装置の清掃は専門家を頼るのもひとつの方法です。
フロアの清掃
飲食店のフロアは、不特定多数の人が利用するので埃・油汚れが溜まりやすく、汚れによる食中毒や、転倒による怪我を起こす恐れがあります。特に、油を多く使う飲食店では、床がべたつきやすいので注意が必要です。また、砂利などを残していると、椅子などを動かした際に床が傷つきやすく、見た目が悪くなるほか、汚れが付着しやすくなります。
清掃の方法としては、毎日、埃や砂をほうきで取り除き、洗剤を使ってモップや雑巾で拭きます。フローリングなど、材質によっては水気や洗剤の成分で傷む可能性があるため、床の種類にあった方法を採りましょう。
床を傷つけないよう椅子の足にカバーを付ける、店休日などを利用してワックスや保護材を塗布するなどの工夫をすると、汚れにくくできます。
飲食店の清掃を依頼する場合のサービス内容
飲食店の清掃を業者に依頼する場合には、日常清掃と定期清掃の2つがあります。
日常清掃では、床のモップがけやテーブルの拭き掃除、トイレや厨房内などの清掃を行います。基本的には、毎日または数日ごとに行う清掃業務を、スタッフが代行します。
一方で定期清掃は、日常的な清掃が難しい換気扇やエアコンといった機器の洗浄を行います。作業は大がかりで時間がかかることが多いため、清掃するものによって、数カ月から数年おきなどの比較的少ない頻度で実施します。
飲食店の清掃を依頼するメリット
飲食店の清掃を業者に依頼する理由としては、3つのメリットがあります。以下を踏まえて、清掃の外注を検討してみてください。
プロの技でピカピカになる
掃除を専門とする業者は、清掃場所にあわせて専用の器具や洗剤などを使って対処できるので、素人では落としきれない汚れまできれいに取り除けます。
特に、ダクトやグリストラップ、エアコンなどは分解が必要になることもあり、日常的に細かな部分まで清掃するのは困難です。プロはさまざまな現場でのノウハウを持つため、迅速であることに加え、自分で器具などを購入して試すよりも低コストで済む場合もあります。
また、壁の養生をして清掃作業を行うので、掃除中にほかの場所が汚れたり、破損したりする心配がありません。
従業員の手間が省ける
清掃業者に依頼すると、従業員が清掃に費やす時間が減らすことができ、メインの接客業務や調理に集中できます。
従業員に代わって業者が日常の清掃を行えば、普段の業務の負担が軽減します。また、夜間などの営業時間外に清掃作業を依頼できるため、店舗のサービスや従業員への影響を最小限にできます。
また、厨房フードや照明といった壁・天井付近の設備の清掃は、慣れない従業員が行うと転倒や落下物などにより怪我をする恐れもあります。このような場所の清掃にも慣れた専門業者であれば、リスクを抑えて任せられます。
什器が長持ちする
清掃業者に依頼すると、エアコン・換気扇・水回りなどの設備の効率悪化を避けられたり、寿命を延ばしたりする効果が期待できます。
たとえば、グリストラップのトラップ管に堆積した油脂を定期的に取り除いてもらうと、詰まって排水できないといった事態を避けられます。また、換気扇に付着した埃や油を除去しておくと、異音がする、稼働しないといったトラブルの回避が可能です。
汚れを放置すると、たとえば配管などの設備は詰まるだけでなく、想定以上の負荷がかかって故障することもあります。設備が故障すれば、修理・交換で清掃を依頼する以上のコストがかかるほか、復旧までに業務が止まることによる損失を起こす恐れもあります。
不具合が目に見えなくても、清掃しないことで知らないうちに設備の寿命を縮めている可能性もあるため、定期的に依頼しましょう。
清掃業者の料金相場
清掃を依頼する場合にかかる場所ごとの料金相場は、以下のとおりです。
床 約1~5万円
ダクト・厨房フード 約3~10万円
エアコン 1基につき1~5万円
なお、これらは目安であり、掃除する範囲や材質、設備の種類、設置場所などによって前後します。難易度によってはこれ以上の料金が必要となる場合もあります。
清掃業者を選ぶポイント
清掃業者を選ぶポイントは2つあります。依頼する範囲や作業内容によっては、清掃費用は高額になるケースも少なくありません。業者の技術力・保険に着目して、自社にあった依頼ができる業者を選定してみてください。
技術力の高さ
清掃にかかる費用や品質は、業者により異なります。業者を選ぶ基準としては、ハウスクリーニング技能士などの清掃に関する資格の有無を指標にできます。
なお、大手業者に清掃を依頼しても、実際に作業を行うのは下請業者のケースがあります。そのため、大手だからといって高い技術力が保証されるとは限らないことに注意が必要です。
清掃依頼においては、想定より費用が高い、清掃が不十分といったトラブルは少なくありません。複数社から見積を取り、作業前に見積内容と相違がないかを確認し、納得できる業者を選ぶのが重要です。
保険の有無
清掃業者に依頼するときは、損害賠償保険に加入しているかを確認しましょう。
清掃業務を行う際には、業者が設備を傷つけたり、壁や床を汚してしまったりするリスクもあります。補償範囲を確かめておくことで、トラブルを未然に防げます。補償金額は設備や破損の度合いによって変わるケースもあるので、問題発生時の対応について作業前によく相談し、合意を取っておくことが大切です。
そのほか、店舗清掃を業者に委託するときのポイントは、こちらで紹介しています。
店舗清掃の費用相場|清掃方法や委託先を選ぶポイントも徹底解説
まとめ
飲食店では、安全に営業を続け、顧客満足度を高めるために清掃を徹底する必要があります。グリストラップやダクトなどの設備は、定期的に清掃業者へ依頼するのがおすすめです。
業者を選ぶ際には、技術力や補償の有無がポイントです。ダイオーズカバーオールは、医療現場でも認められる高い技術と品質で清掃を行います。ぜひご検討ください。