年末に行う会社の大掃除は、法的な側面だけでなく、社員の健康や業務効率を高めるうえでも大切な取り組みです。

本記事では、労働安全衛生法のポイントや準備手順、具体的な掃除方法、不用品の処分、5Sの活用などについて、わかりやすくまとめて解説します。

会社のオフィスを徹底的に整理し、新しい年を快適に迎えるためにも大掃除の基本を押さえておきましょう。

会社の大掃除が必要とされる理由

企業において大掃除が必要とされる背景には、法的義務や安全衛生面での必要性があります。

会社のオフィスを定期的に清掃することは、多くの従業員が日々快適に働くうえで欠かせません。特に年末に行う大掃除は、書類や備品の整理をはじめ、普段は手の回らない箇所のほこりや汚れを一挙に取り除く絶好の機会となります。社員の健康維持や職場の安全確保にもつながるため、経営者や総務部門としては真剣に取り組むべき重要事項です。

また、大掃除には法的な義務が関わってくる点も見逃せません。労働安全衛生法に基づき、一定の清掃を行わなかった場合には罰則が科されるリスクもあり、企業としてはコンプライアンスを守るためにも計画的に作業を行う必要があります。こうした法的背景を踏まえ、会社全体で責任を分担しながら取り組むことが望ましいでしょう。

労働安全衛生法における清掃義務とは？

※労働安全衛生法が定める清掃義務では、事業者が作業環境を適切に維持することが求められています。具体的には、ほこりやゴミの堆積を防ぎ、床や作業スペースの危険要因を取り除くなど、社員が安全に働ける状況を保つ指針です。違反が発覚すると、罰則や改善指導を受ける場合があるため、定期的な大掃除は企業としての責任を果たすうえでも重要です。
※出典：https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei09/pdf/03f.pdf(「厚生労働省 労働安全衛生法 第５章 清掃の管理」参照)

半年に1度の大掃除が必要な背景

※労働安全衛生規則では、6カ月以内ごとに統一的かつ定期的な掃除を行うことが推奨されています。これはオフィス内のほこりや雑菌、不要物の蓄積を未然に防ぐだけでなく、設備や備品を長持ちさせる効果も期待できるからです。年末は半期に一度のタイミングとも重なりやすいため、企業がまとめて大規模な掃除を行うのに適した時期といえるでしょう。
※出典：https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-1-3h7-0.htm(「労働安全衛生規則 第三編 第七章 清潔」参照)

会社の大掃除を行うメリット

大掃除は単なる掃除作業にとどまらず、職場環境の改善や社員の意欲向上にも大きく寄与します。

まず、オフィス内の不要物を処分し整理整頓を行うことで、作業スペースを有効に活用できるようになります。書類や備品の位置を見直すことで目的のものがすぐに見つかり、普段の業務効率が向上するのです。さらに、社員同士で協力して作業できる点も大掃除の大きな利点のひとつです。

このような共同作業を通じて、職場の雰囲気を一新し、チームの連帯感を育むことも期待できます。大掃除を通じて浄化された空間で業務に取り組むことで、従業員のモチベーションも向上しやすくなります。結果として職場全体の生産性や社内コミュニケーションの活性化に結びつくため、企業全体にとって価値の高いイベントといえるでしょう。

業務効率と生産性の向上

整理されたオフィスでは、書類を探す手間や移動の無駄が減り、日々の業務がスムーズに進行します。細かな清掃やレイアウトの見直しによって、社内全体で時間のロスが大幅に削減できるのがポイントです。そうした効果が積み重なることで、最終的には生産性の向上につながります。

社員の健康管理や安全確保につながる

オフィス内のほこりや汚れが放置されると、社員の健康に悪影響を与える恐れがあります。特に空気の通り道となる空調設備や床の汚れは、呼吸器系のトラブルに発展する場合もあるでしょう。大掃除によって職場環境を衛生的に保つことで、病欠リスクや作業中のケガを防ぎ、社員の安全・健康に寄与します。

職場のモチベーション維持とチームワーク強化

大掃除を一丸となって進めることで、普段あまり交流のない部署間でもコミュニケーションが生まれやすくなります。チーム全体で手分けをして掃除を行うことで、協力し合う姿勢や連帯感が育まれやすいのです。その結果、目標を達成する喜びを共有しやすくなり、職場の雰囲気やモチベーションも自然と高まります。

年末の大掃除に向けた事前準備

年末に向けて計画的に準備を進めることで、大掃除当日の作業が円滑に進みます。

まずは社内全体で掃除する範囲や掃除の目的を共有し、重点的に手を入れるべき箇所をはっきりさせることが大事です。担当者や役割を明確にすることで、作業に無駄がなくなり、大攪乱なく全体をカバーできるでしょう。準備段階を丁寧に行うほど当日の業務負荷が軽減できるため、計画立案は非常に重要です。

また、清掃道具や保護具などを前もって用意しておくと、当日の混乱を防ぎながら作業を効率化できます。社内で必要な掃除グッズが足りない場合は早めに調達し、社員が安心して使用できる環境を整えましょう。さらに、スケジュールを周知しておくことで従業員の協力体制が整い、余裕を持って不用品の処分などに取り組めます。

掃除計画の立案と担当者・役割の割り振り

大掃除の範囲を明確にして担当者を振り分けることで、どのエリアを誰が担当するかを整理できます。フロアごとや場所ごとの責任者を定めると、作業内容に対する責任が明確になり、スムーズな進行が期待できます。特に年末の繁忙期はタスクが多いので、早めに計画を立てることが重要です。

必要な清掃用品・道具のチェックリスト

洗剤やスポンジ、マスク、掃除機、ゴミ袋など、必要なアイテムをリストアップしておくと抜け漏れを防げます。高度な洗浄が必要な場合は業務用洗剤の使用や保護具の着用が必要になるため、その都度確認することが大切です。まとめて準備することでコスト削減にもつながるほか、一括管理がしやすいという利点があります。

掃除スケジュールの作成と周知方法

掃除の日程や各エリアの作業内容を、社内のカレンダーやメールで周知しておくと当日の混乱を防ぎやすくなります。特に年末は業務が立て込みやすいので、余裕を持った締め切りや分担計画を立てるのがポイントです。周知後は部署やチームごとに確認を重ね、不明点を早めに解消しましょう。

場所別 清掃のポイントと手順

オフィス内のエリアごとに適切な清掃手順や注意点を把握しておきましょう。

事務所の床やデスク周り、水回り、空調設備など、オフィスには多種多様な清掃箇所があります。場所ごとに最適な掃除方法を知っておくことで、短時間で効率的に作業を進めることが可能です。さらに、清掃頻度や使用する道具を適切に選ぶことで、作業品質を保ちながら社員の負担も軽減できます。

年末の大掃除では、普段以上に徹底的な清掃を行うことが期待されるため、各エリアの汚れ具合を事前に把握しておくのが理想的です。カーテンやブラインド、窓枠など、見落としがちなポイントもチェックリストに加えておくと抜け漏れなく取り組めます。仕上げには清掃道具の片付けやメンテナンスも忘れず行い、次回の掃除に備えましょう。

オフィスの床・カーペット・デスク周り

床やカーペットを掃除する際は、ゴミをあらかじめ回収してから掃除機をかけると作業が捗ります。特にカーペットは繊維の奥にゴミが入り込むため、毛の流れに逆らうように掃除機をかけると効果的です。デスク周りには書類や文具が散乱しやすいので、大掃除を機に不要な資料を処分しつつ整理するとよいでしょう。

空調設備（エアコン・換気扇）の掃除方法

空調設備は実はほこりやカビが溜まりやすく、放置すると室内環境に悪影響を与えます。まずはフィルターやカバーを外し、水洗いや専用洗剤を使って汚れを落とすのが基本です。エアコンや換気扇の内部クリーニングが難しい場合は、専門業者に依頼して安全かつ確実に掃除を行うと安心です。
※エアコン清掃についてはこちらもご覧ください。

水回り（給湯室・トイレ）の効率的な掃除

給湯室やトイレなどの水回りは、菌や水垢が付着しやすいエリアです。洗剤を使い分けながらこまめに汚れを拭き取り、最終的に消毒を行うことで衛生状態を保ちやすくなります。ゴム手袋やマスクなどの保護具を着用し、安全に配慮しながら作業するとともに、普段から簡単な清掃を習慣づけることが肝心です。

照明・窓・ブラインドのメンテナンス

照明器具や窓ガラス、ブラインドは、日常清掃では見落とされがちな場所です。照明カバーのほこりを取り除くだけで照度が上がり、オフィス全体の明るさを改善できます。ブラインドや窓枠の汚れは、専用のクリーナーやクロスを使って細部まで拭き取り、空間を清潔に保ちましょう。

不用品の処分方法

大掃除の機会に不要な物を処分することで、オフィスのスペースを有効活用できます。

古い書類や壊れた備品など、意外とオフィスには使われていない物が多く残っていることがあります。これらを年末の大掃除で一気に処分することで、職場のスペースを広く確保し、必要なものを探しやすくする効果が期待できます。処分作業は計画的に進め、企業の機密情報が含まれる書類はシュレッダーを徹底するなど、セキュリティ面にも配慮しましょう。

また、処分する物の中にはリサイクルやリユースが可能なものもあるため、安易に廃棄するだけでなく、環境への配慮も大切です。企業イメージの向上だけでなく、持続可能な社会づくりにも貢献できるため、積極的に取り組むとよいでしょう。

リサイクル・リユースを積極的に考える

まだ使用できるオフィス家具や備品は、社内での再利用や他団体への寄付を検討するのも一案です。再利用が難しい場合は自治体のリサイクル回収や専門業者への引き渡しを検討し、廃棄物を減らすアプローチを取ることで環境保護に貢献できます。こうした取り組みを社員と共有すれば、企業のCSR活動としてもアピールしやすくなるでしょう。

専門業者や自治体の回収を利用する際の注意点

不用品を大量に処分する場合は、自治体の回収スケジュールや専門業者の予約状況を確認しておくことが重要です。年末は依頼が集中するため、早めに連絡を取っておかないと希望の時期に回収してもらえない可能性があります。処分する物の分別や安全対策など、事前に要件を確認しておき、スムーズな廃棄作業を行いましょう。

5Sを活用したオフィス環境の改善

効果的な清掃や整理整頓を維持するには、5Sの継続的な取り組みが欠かせません。

5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字を取ったものです。この考え方を日常業務に取り入れることで、必要なものだけを選別して使いやすく配置し、常に清潔な環境を保つ習慣が整います。年末の大掃除だけでなく、日頃から社員全員が意識して取り組むことで、オフィス全体の生産性と士気を高められるでしょう。

特に、日常的な清掃や物の配置の見直しを習慣化すると、社内の衛生水準を一段と向上させることができます。さらに、ルールやマニュアルをきちんと定めることで、全員がいつでもスムーズに行動できる体制を作れます。結果として、快適な職場環境が維持され、新年度のスタートに備えることが可能です。

整理・整頓で必要最低限の物だけを残す

デスクやキャビネットには、実は不要な書類や備品が紛れ込んでいることが多いものです。まずは必要な物と不要な物を仕分けし、使用頻度が高い物を手が届きやすい場所に配置することを心がけます。こうしたステップを踏むことで、業務の流れが円滑になり作業時間の無駄も減らせるでしょう。

清掃・清潔・躾で快適な職場を維持する

大掃除だけでなく、日常的な清掃習慣を根付かせることが快適なオフィスを保つ秘訣です。社員それぞれがゴミの分別やデスク周りの片付けに意識を向け、定期的に点検することで、常に清潔感のある環境を維持できます。最終的には、このルールを守る習慣や姿勢（躾）が定着し、オフィス全体の生産性と仕事へのモチベーションが高まっていくでしょう。

プロの清掃サービスを利用するメリット

時間や労力に限りがある場合は、専門業者に依頼する方法も有効です。

掃除の範囲が広く人手不足が懸念される場合や、専門的な道具や技術が必要なエリアの清掃には、プロに任せるのもひとつの手段です。大掃除を外部委託することで、社員の負担を軽減しながら、高水準の仕上がりを期待できます。限られたスケジュールの中で、効率よくエリアをカバーしたい場合にも大変便利です。

また、専門業者には洗浄剤や清掃機器の選定のノウハウがあるため、汚れの種類に応じて最適な方法を適切に判断してもらえます。結果として、オフィスの美観と従業員の安全を同時に守る高品質な清掃が可能になるのです。費用面とのバランスを検討しながら、必要に応じて頼ることを検討しましょう。

大掃除にかかる時間とコストの最適化

社内メンバーだけで対応できないほどの大規模な清掃を短期間で終えたい場合、プロに任せるメリットは大きいです。限られた作業日数の中で大掃除を完了させるのに、適切な人員とスキルを持った清掃チームが効率良く対応してくれます。結果として、社員が本来の業務に集中できることによる生産性向上にもつながるでしょう。

サービス依頼のタイミングと注意点

年末はどのオフィスも大掃除シーズンになるため、清掃サービスへの依頼が集中しやすくなります。早めに依頼先を決定し、どのエリアを重点的に清掃してほしいかを明確に伝えることが重要です。サービス内容や費用だけでなく、清掃スタッフの人数や作業時間も含めて事前に確認しておくと、トラブルを回避しやすくなります。
※オフィス清掃の外注利用にについてはこちらもご覧ください。